2025年度日本風工学会年次研究発表会で研究発表を行いました
2025年6月25日~26日に神戸大学六甲台第2キャンパスで標記の発表会が開催され,研究室からは松宮准教授と学生8名が研究発表を行いました.風工学の専門家が集まるなか,一部の学生にとっては初めての対外発表の機会でもありました.以下に学生の感想を紹介します.
The above-mentioned conference was held on June 25-26, 2025, at Rokkodai 2nd Campus of Kobe University, and Associate Professor Matsumiya and eight students from our laboratory gave presentations. For some of the students, it was their first opportunity to present their work to the public amidst a gathering of wind engineering experts. Here are some comments from the students.
Runze XU
矩形断面の空力振動に対する渦の相互作用の影響
The presentation itself was well done, but I was not able to answer the questions from the audience very well, probably due to being too attached to my ideas and misinterpreting the questions raised by others. After replying to the second question from *****, I realized that I did not get the point of his first question. I will pay attention to this problem in future presentations. And my slide seems to be still heavy compared to other better slides and needs to be further improved in the text content and content layout.
It was my first time attending a professional conference on wind engineering, and it broadened my horizons, especially in the field of wind environment and disaster. Several researchers are interested in tornadoes, and the pressure regulating device used to simulate the short-term low-pressure condition during the tornado gave me a deep impression, which is mainly because of the simple idea. If I were the researcher, I maybe want to find a method that can simulate the tornado, which will cost too much. And the presentation made by ***** gave me an example of finding questions in daily study and life. His study focuses on the influence of fences on the flow field change around the building, and the influence of the fence is probably not easily noticed in the past because there were not so many low-flying aircraft. But now, not only helicopters but also drones have become common around the world, and the wind engineering research related to architectural design may develop in a more refined, diversified direction. What’s more, the full-scale experiments of J-shaped roof tiles also left a deep impression on me. To be honest, it is my first time seeing the full-scale experiment method besides those directly testing on the real structure. I hope to have more opportunities to attend such conferences in the future.
河邊 宏紀
表面圧力に基づいた有迎角時の矩形断面の空力不安定性に関する研究
初めての学会発表で発表前日から非常に緊張していたが,「自信をもって発表し,楽しむこと」を意識して発表に臨んだ結果,本番では適度な緊張感の中で全力を尽くすことができたと思う.発表では,レーザーポインターを用いて適切にスライドの該当箇所を示しながら詳細を付け加えて話し,研究内容を明瞭に説明することを意識した.一方で,発表時間を気にするあまり口調が早くなってしまう場面もあったので,その点は反省して改善に努めたい.また他の参加者の発表を聞く中で,抑揚をつけながら端的に内容を説明している発表が理解しやすいと感じた.質疑応答で質問された内容については,今後の研究でさらに深く検討していかなければならないと感じていた箇所だったので,その点に関しては一段と力を入れて研究に取り組みたいと思った.今回の発表における良かった点および反省点の両方を踏まえ,次回以降の学会発表ではより質の高い発表ができるようにしたい.
今回の風工学会に参加して印象的だったのは,風工学の分野の広さだ.学会参加前までは特に気にすることはなかったが,実際に研究発表の場に参加してみると土木分野以外にも,建築物,竜巻,都市の風環境など,様々な分野において風工学の研究が行われていることを実感した.多様な研究分野の知見を深めることができ,大変興味深かった.学会発表に参加することで,分野を横断して多くの研究者,他大学の学生と交流できる貴重な機会を得ることができると実感した.そのため,今後機会に恵まれたら学会発表に積極的に取り組んでいきたいと思った.
羽田野 太佑
構造物のねじれ空力振動に対する多孔質体を用いた高欄のモデル化に関する研究
初めて日本風工学会年次研究発表会に参加し,風に特化した研究の発表の場で多くの学びを得ることができました.今回が3回目の学会の参加ということで,やはり緊張はしますが,徐々に慣れてきて全体を通して非常に楽しむことができたと思います.大学で研究されている方の基礎研究や,企業のプロジェクトに向けての研究の発表を聞く中で,現在実用化されている工学技術が,基礎研究の積み重ねによって成り立っていることを改めて実感しました.また大学の先生方や企業の方々の発表では,プレゼンテーションスキルの高さを感じました.自身の研究に対して深い理解を示されており,どの角度から質問が来ても即座に回答されていて,いつか自分も同じようなクオリティで発表できるようになりたいと思いました.学会を通して,風洞実験は当然のこと,数値流体解析を用いた研究が多く見られ,実験コストや設備の制限を踏まえると,解析を活用することが今後風工学の検討をする上で非常に重要になってくると感じました.
また発表では,短い時間で的確に内容を伝えられるようなスライドの準備をすることはできたと思います.一方,強調したい部分を的確なスピードで情報を伝えることを意識しましたが,上手な人の発表は,聞き手が聞きやすいようにペンライトを用いながら視線や注目すべき箇所を的確に誘導しているなと感じました.質疑応答は学会を重ねるごとに慣れてきましたが,やはりまだまだ未熟な部分があるので,次の機会で再挑戦したいと思います.どの方の発表もとても興味深く,非常に充実していました.徐々に慣れてきて学会の面白さがより分かってきたので,今後も機会があれば積極的に挑戦していきたいと思います.
春名 健太郎
雪粒子の衝突角度・速度が着雪率及び着雪体密度に与える影響
発表自体は緊張することなく、普段通りの雰囲気で説明を行うことができたが、質疑応答においては自分の力不足を痛感する場面が多くあった。風工学会ということで、日頃の研究室内の発表ではあまり出てこないような角度からの質問もあるだろうと予想していたものの、実際にはその場で即座に答えることができず、回答が曖昧になってしまう場面があった。発表が終わってから冷静に振り返ると、質問内容自体は決して難解なものではなく、しっかりと整理して考えれば十分に答えられた内容だったため、悔しさが残った。また、優秀発表彰を受賞した学生の発表は内容が分かりやすいだけでなく、質疑応答でも論理的かつ的確に回答しており、聞き手への配慮や柔軟な姿勢が随所に見られた。今後、自分も事前準備をより入念に行い、質問に対する応答のパターンや、関連分野の知識もあらかじめ整理しておく必要があると痛感した。次の学会では、今回の反省を踏まえ、発表だけでなく質疑にも十分に対応できるよう努力していきたい。
一方で、今回の学会参加を通じて、研究以外の面でも多くの学びがあった。特に印象に残ったのは、風工学という分野の広がりと多様性だ。橋梁や洋上風力といった典型的な土木構造物に関する研究だけでなく、歩行者空間や住宅地の風環境、集落配置、さらにはやり(矢)の飛翔に関する研究など、土木の範疇を越えた研究発表が多数あった。風工学といえば構造物に関する研究をイメージしていたが、今回の発表を通じて、その分野が想像以上に幅広いことを知った。今回得た学びは、今後の学会や研究に生かして成長していきたい。
室田 郁人
今回は「聴講」のみで参加する初めての学会だった.これまで「講演」者として参加した全ての学会が,私自身の研究への姿勢に大きな影響を与えたが,本学会も例外ではなかった.この2日間の印象をあえて簡易な表現で形容するなら,『面白い』が最適だと思う.第一に,私の所属する京大橋梁研の学生発表,特に質疑応答は『面白い』の連続だった.橋梁研の研究内容を私自身も深く理解していたからこそ,様々な角度から飛び交う質問は自分事のように考えさせられ,新たな視点を多く授けてくれた.研究背景の根本を問うもの・分析手法の妥当性を問うもの・分析結果の考察を求めるもの―――.自分自身の研究ではどうしても一辺倒な思考に陥りやすいため,客観的な視点で実験計画の策定や分析を進める必要性を強く感じ,修士論文作成時にも留意しようと心に決めた.
加えて,他大学・企業に所属されている方々の発表も,無論あまりにも『面白い』ものだった.特に印象的なのは,「風環境」に焦点を当て,構造物群周りの乱流特性解明を目的とした種々の研究だ.LES等の数値流体解析に基づいて「風環境」における乱流の詳細再現を試みるこれらの研究は,「構造物の応答評価」を主眼とする私たちとは着眼点が大きく異なり,未知の分野への強い興味から私は『面白み』を覚えた.さらに,これらの研究が扱う「風環境」の中には,防風効果を期待された樹木群に囲まれた実際の集落や,近年構想が進むUAMを想定した単体建物の屋上など,従来の枠にとらわれず幅広い対象と風工学を融合させたものが散見された.既存の対象,あるいは将来想定される対象に対して,工学的な知見を以て風環境に適応させていく―――「風工学の責務」を体現するその最前線で研究進捗をお聞きできたのはとても有意義な時間だった.
今までの学会は私にとって,研究への意欲を高く維持する“魔法瓶”のような存在だったが,今回の2日間にわたる『面白い』学会はむしろ,“電子レンジ”のように研究への意欲を一気に加熱してくれた.加えて蛇足ながら,キャンパスからの美しい眺め・うどんが美味しい学食・おしゃれな学生たち等々,他大学ならではの環境を味わうことができるのも学会の醍醐味だと再認識し,学術的な側面以外も含めて,私の2日間は鮮やかに色づいた.学会の開催・および私の聴講参加に向けて尽力いただいた多くの方々への感謝の意を表したい.同時に,満足のいく修士論文を執筆できるよう,最後まで力強く走り抜けることをここに誓いたい.
山口 宗一郎
私は本学会に聴講者として参加したが,発表はもちろん,質疑応答でのその専門性の高さに圧倒されるとともに,現時点での自身の風工学に関する知識の乏しさを痛感する場となった.その点で今後の実験や研究に一層励もうと思いを新たにする貴重な機会となった.
また,本学会で*****さん,*****さんの発表がちょうど行っている自身の実験・研究とも重なり,特に勉強になった.まず*****さんの研究では,私も扱う*****ら,*****らの円筒の渦励振の評価式と屋外応力計測の結果が比較されていた.実測値は,風の変動によって発生する応力のピークは理論値よりも小さくなり,高振幅となる風速幅は大きくなるというのはとても面白く,新たな学びとなった.また,実測データには二次モードの渦励振も記録されており,一次モードよりも曲率が大きく,部材端部の曲げに不利に働くことから,出現頻度は少ないものの,二次モードによる累積疲労損傷度の評価の重要性が示唆されていた.私が現在行っている単円柱の自由振動実験において意図せず二次モードの渦励振も発現しているため,二次モードも含んだ応答予測や一次モードの振動との関係性など,何かに利用できたらより意味のある研究になるのではないかと希望を感じた.*****さんの発表では,円柱に巻き付けるスパイラルロッドの直径・本数・ピッチといった条件を変化させて空気力が測定されており,私自身の実験では直径のみを変えていることから,巻き付け角や本数が及ぼす影響についても学ぶことができ,大変参考になった.また,スパイラルロッドの直径が部材径の1/10程度であれば,本数が2本でも変動揚力係数を0程度まで低減できるという結果が示されており,私の実験のように巻き付け角が45°と比較的大きい場合に,変動揚力係数がどのように変化するか,今後の結果がより楽しみになった.
改めて,本学会は自身の未熟さを痛感するとともに,今後の研究への意欲と新たな学びを得られる貴重な機会となり,聴講者としてではあるが参加できて本当に良かったと感じている.今回は風工学会主催の学会での発表には至らなかったが,今後参加予定の学会に向け,日々研鑽を積んでいきたい.
下城 颯暉
ウェイク振動に基づいた並列2円柱のねじれ振動特性に関する検討
初めての対外発表であったが、橋梁研内の発表順では後の方であったこともあり、あまり緊張はせずに堂々と取り組めた点はよかったと思う。発表時間を超過することはなく、途中で詰まったりもせずに時間内にスムーズな発表を行うことができた。ただ、練習しすぎたことにより、暗記した原稿を単にスラスラ口に出すだけの発表になってしまい、重要な部分とそうでない部分の差別化ができておらず、要点をあまり理解してもらえなかった。質疑応答で、自分が伝えたかったことを引き出してもらえたような質問をいただき、そういったことをあらかじめ発表内容に含めるべきであると感じた。
他の方の発表で印象に残ったのは、同じセッション内の*****さんの研究だ。内容が興味をそそられるものであっただけでなく、原稿を一切見ない発表で、特に伝えたいことを理解していらっしゃったので、初めて聞く内容でも自然と頭に入ってきた。質問に対して堂々と答えておられた姿がとても印象的で、自分の研究に自信を持っていることが伝わってきた。単に原稿を覚えるという練習をするのでなく、発表全体の流れや要点を完全に把握できるような練習が必要不可欠であると感じた。
初めて学会に参加し、たくさんの方々の発表を聞いて、聞き手が惹きつけられて質疑が盛り上がる発表というのは、自身の研究について熟知し、自信を持っているものであると強く感じた。自分の研究をほとんど知らない方に初めて聞いてもらう場であったので、普段研究をしている中では当たり前に感じていたことでも、初見の方には伝わらないことがたくさんあるように思った。今後の学会に向けて今一度自分の研究を振り返り、自分の研究の興味深さを多くの方に知ってもらいたいと強く感じた経験であった。
原 紗理
構造物のねじれ空力振動に対する離散的フェアリングの影響に関する研究
初めての対外発表ということもあり非常に緊張した.授業や就職活動で忙しい中,自分なりにできる限りの準備はできたと感じている.ただし本番では,緊張のあまり練習の成果を十分に発揮できなかった.例えば,原稿はほとんど覚えていたにも関わらず,6分経過時に鳴ったプレゼンタイマーのベルに反応してしまい,一瞬言葉が詰まってしまった.次回の土木学会で予定されているポスター発表は,今回の口頭発表とは雰囲気が異なると思うが,今回の経験を活かし,より入念な準備をすることで,過度に緊張せず臨めるよう努力したい.具体的には,視覚的にわかりやすい構成にし,聞き手に応じて,説明の深さを切り替えられるよう練習に工夫を加えたいと考えている.質疑応答では,考察が甘かった点や説明が不足していた部分をご指摘いただき,大変勉強になった.その場で必死に頭を回転させて回答を考えていたが,発表が終わった後に「こう答えればよかった」と思うことが多々あった.せめて,今回いただいた質問に対しては,次回以降どこで問われても確実に答えられるよう準備したい.
また,他の参加者の発表も非常に参考になった.特に印象に残ったものは,*****によるご発表である.ご自身がとても楽しそうに研究を語られていて,その姿を見ているだけで研究内容への興味がわいた.発表中には動画を多く活用し,ユーモアを交えながら話を進められていたため,最後まで飽きずに集中して聞くことができた.将来的には,私も*****のように聞き手を引き込む発表ができるようになりたいと感じた.今回の経験を通じて、伝える力も研究者として重要な資質であることを改めて実感した.今後は研究内容だけでなく,伝え方にも磨きをかけていきたい.
堀江 里咲
数値流体解析を用いた定速回転中の矩形断面の空力特性に関する研究
6月25日・26日に神戸大学で行われた日本風工学会年次研究発表会に参加し,研究発表を行いました.学会への参加は今回が初めてで,大学の外で発表をするのも初めての経験でした.私は授業の都合で2日目のみの参加となりましたが,学生発表を含む計34編の発表を聞くことができ,多くの刺激を受けることができました.自分の発表は「数値流体解析を用いた定速回転中の矩形断面の空力特性に関する研究」というテーマで,質疑応答を含めて10分間でした.時間が限られていたため,伝えたい内容を整理するのが難しく,特に研究の背景や目的を簡潔に説明することに苦労しました.ですが,他の方々の発表を聞いてみると,短い時間の中でも要点をしっかり押さえており,説明の仕方やスライドの構成など,とても参考になりました.質疑応答では反省が多いですが,質問をいただけること自体が,自分の研究に関心を持ってもらえたようで嬉しく,研究者の方々に見ていただけるというのは大きなモチベーションになると感じました.
また,他の発表を聞く中で,風に関わる研究の幅広さにも驚きました.自分が普段接している解析や実験以外にも,気象や防災,統計や機械学習を用いたアプローチなど,さまざまな視点から風を扱っている研究があり,とても刺激になりました.建設会社の方々の発表では,実務に即した構造物への風の影響の評価が多く,実社会との接点を感じました.一方,大学の研究では自由度の高いテーマや公共的な視点も見られ,学術研究の多様性と意義を再認識しました.大学院に進学した理由の一つに研究の世界に触れてみたいという思いがあり,今回参加できることになり嬉しかったです.しかし,今までは学会に出ることがゴールのように感じていましたが,実際に出てみると,自分がまだ研究活動の入り口に立ったばかりなのだと実感しました.今後は,普段のゼミなどでの質疑にも積極的に取り組み,発表や議論の練習を重ねていきたいと思います.今回の経験を励みに,研究に対する意識を高めていきたいです.
松本 龍輝
数値流体解析を利用した正方形角柱への雪粒子の衝突に関する研究
初めての学会の緊張感からか練習よりも早口になってしまった.次回以降の学会では,より堂々と余裕をもって発表ができるように心がけたい.また,質疑応答では質問の意図を捉えられず詰まってしまうことがあった.特に解析のセッティングや解析での仮定については質問されることも多いと思うので,事前によく確認してから学会に臨むようにしていきたい.質問していただいた内容から,自分がこれまで意識できていなかった細かな問題点を発見することもできた.いただいた質問を参考に,より知識を深め,1つ1つ課題を解決していきたい.
*****さんの発表が印象に残った.風工学会では毛色の異なるといえるテーマでも,専門外の人にも伝わるよう丁寧な説明を意識しているのを感じた.自分の研究テーマも風工学会や土木学会では毛色が違うテーマなので,*****さんの発表を参考に,専門外の人にも伝わりやすい発表を意識して取り組みたいと感じた.また,パソコンから離れスクリーンのすぐそばに立ち発表することでスライドを効果的に用いていた点も印象的だった.自分の発表は,発表練習に割く時間が足らず,完璧な準備ができたとは決して言えない状態だった.次回以降の学会では,授業や就活と両立できるよう,計画的に時間の余裕をもって学会準備に取り組み,優秀発表賞を目標に,聞き手を意識した発表ができるよう十分に練習したい.